内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニア整復術

会陰ヘルニアの手術をご紹介します。
手術画像になりますので苦手な方はご注意下さい。

「ヘルニア」と聞くと腰の病気を思い浮かべるかと思いますが、「ヘルニア」とは臓器や組織が正しい位置から飛び出ることを言います。
背骨の間のクッション「椎間板」が飛び出たものを「椎間板ヘルニア」、今回のように会陰部(肛門周囲)に腸が飛び出てしまったのが「会陰ヘルニア」です。

骨盤周りの筋肉が弱り、腸を支え切れなくなって腸が蛇行してしまい、お尻にボコっと便が溜まってしまいます。
原因はハッキリしていませんが、ほとんどが去勢手術をしてない男の子に起こるので、去勢手術をすることが予防につながります。

まずは、去勢手術をします。
そのあと開腹し、直腸を頭側に引っ張って固定します。
必ず必要となる処置ではないですが、やっておくと再発防止になります。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

下がお尻側で仰向けで寝ています。萎んだ膀胱が見えます。
腸を引っ張って糸をかけているところです。右側は腹筋をめくっていて裏側が見えています。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

固定が終わったところです。
右下がお尻側、腹筋の裏側と直腸が縫い付けてあります。
ここで終わりでもいいですが、念のため精索固定も行いました。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

睾丸側へもぐり込んでいた精索をお腹側に引っ張ってきたところです。
予め睾丸を取ったおいたのでできることです。
こう見るとまるで避妊手術のようで、オスはメスから分化するというのが納得できます。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

精索を直腸と同じところに固定し、余分な部分は切除しました。
この処置をしておくことで前立腺や膀胱が持ち上げられ、よりお尻に対する圧迫が軽減されます。
さて、いよいよ会陰ヘルニアの手術です。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

お腹を閉じ、うつ伏せにしてヘルニアの状態を確認しているところです。
肛門から指を入れると右側の皮膚の下に到達してしまいます。
ここに腸が入ってしまい便が溜まります。
左側は正常だったので今回は右側だけ処置をします。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

お尻の右側を切皮していきます。
まだ脂肪があってヘルニアの穴は確認できません。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

穴が見えてきました。本来ならば骨盤周りの筋肉で塞がれていて穴は開いていません。
引っ張っているのはお腹の中の脂肪などです。
直腸固定をしたので腸は奥に触れる程度です。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

お腹の中の組織を押し戻し、穴がきれいに見えるようになりました。
指がスポッと入る大きさです。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

分かりづらいですが、内閉鎖筋を骨盤の骨膜ごと剥がしているところです。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

きれいにはがれました。
この筋肉を穴のフタとして使います。
筋肉だけだと縫っても裂けてしまうため強固な骨膜が必要です。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

次に仙結節靭帯を露出させます。
白く見えているのは綿棒でその奥に靭帯がチラっと見えます。
靭帯なので触るととても固いです。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

靭帯に糸をかけます。頑丈です。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

靭帯とフタとなる内閉鎖筋、外肛門括約筋などに糸をかけていきます。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

それらを縫い付けて穴が塞がりました。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

指で押してもビクともしません。

内閉鎖筋転移と直腸固定による会陰ヘルニアの整復

皮膚を縫って終了です。

飼い主さんは去勢手術をしないことのデメリットを聞かされていなかったとのことでした。
手術をしないと必ずなるわけではないですが、こうした事態になる可能性があることを説明するのも獣医師の使命だと思っています。

 

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