猫の全抜歯

3歳の黒猫さんが歯が痛そうで食欲がないということで来院されました。
確かに診てみると3歳の割には歯がボロボロです。ｶﾞ━━(;ﾟДﾟ)━━ﾝ!!
シェルターから保護した子だということでウイルス性の口内炎を疑いました。

犬歯（牙）の歯根がだいぶ出てきてしまっていて、歯肉炎もひどいです。

上の臼歯（奥歯）

下の臼歯はこんな感じで、触っただけで抜けちゃいますΣΣ(ﾟдﾟlll)
ウイルス性の口内炎治療の第一選択は全抜歯もしくは全臼歯抜歯です。
全抜歯と聞くと驚かれる飼い主さんがほとんどです。
抗生剤や消炎剤などで治療しても気休め程度だし、一生打ち続けなければなりません。

ウイルスによって免疫力の低下し、歯についた細菌が原因で口内炎が起こります。
なので、歯石が付着し細菌が繁殖する場所となる歯をなくしてしまうことが一番の治療になります。
人間だと歯を1本抜くのも大事ですが、犬猫の場合、そりゃ抜かないに越したことはないですが、こうなってしまっては抜いてあげたほうがQOLは上がります。

みなさんの心配は今後流動食のようなものしか食べられなくなるのでは？ということです。
安心して下さい、食べられますよ( ´,_ゝ｀)
むしろ痛みから解放され、抜いた直後からドライフードをモリモリ食べてくれる子がほとんどです(´∀｀)９ ﾋﾞｼｯ!

それでは実際に当院での抜歯の様子をお見せします（血が苦手な方はお気をつけ下さい）。
グリグリと無理やり抜こうとするのは大変危険です。
歯根が折れてしまったり、手が滑って歯茎その他を傷つけてしまう場合があります。

ますは、犬歯の抜歯です。
歯肉を台形に切開しぺラッとめくっておきます。あとで使うので切り取りません。
歯を支えている歯槽骨が見えてきました。

歯槽骨を削ります。

歯根が露出しました。

そしたら反対側にエレベーターという器具を挿入し･･･

軽くひねってあげればテコの原理で歯が浮いてきます。
歯槽骨が残っているとこうはいきません。

スポッと簡単に抜けました。

抜歯跡の大きな穴は骨からの感染を防ぐため塞ぐ必要があります。

最初に切開した歯肉をひっぱらなくても穴が塞がるよう調整し･･･

縫って終了です。自然に溶ける糸なので抜糸の必要はありません。
お腹を縫うときとは違い、早く溶ける糸を使用しています。

次に臼歯です。この歯は1本の歯に3本も根っこがついているので、そうそう抜けません。

Tの字に分割すると･･･

エレベーターを使わず簡単に抜けました。
抜けない場合は犬歯同様、歯槽骨を削っていきます。

この子の場合は下の犬歯は炎症もなく正常だったので、全臼歯＋上顎犬歯の抜歯となりました。
全抜歯と聞くと躊躇される方が多いですが、やって良かったという声を多く頂きます(・∀・)

慢性の口内炎に苦しんでいる方は一度ご相談下さい！

 

TEL.03-6452-2182